産直放浪記

全国各地の直売所で見たものたち

ヨッテカーレ城端

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 東海北越自動車道を名古屋から富山方面に向かって、富山県側で最初のS.Aの城端S.Aと繋がっているハイウェイオアシス城端のなかにある直売所。一般道からも行くことができる。運営は地元のJAなんと

 店の規模は小さいものの、農産物はもちろん加工品や土産物も非常にいいものをおいている。そして、なんと言っても(シャレではない)、ここの一番の魅力は「おにぎり」だ。

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富山は言わずと知れたコメの産地で、コメの種子(種籾)の生産量は日本一。江戸時代から旨い米の種子は富山のこの砺波平野で作られていたのだ。このヨッテカーレで食べられる握りたてのホカホカのおにぎりは、炊き方も握り方も、具材も海苔も絶品で、これまで食べたおにぎりの中で間違いなくナンバーワン。五箇山の赤カブ漬けが添えられているのもいい。これで160円は安い。このおにぎりを食べるためだけのここに寄る価値がある!

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 券売機で食券を購入すると自動的に注文が入り、握りたてをこのカウンターから出してくれる。

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おにぎりのラインナップは黒とろろとか白エビとか、富山ならではのものが目立つ。

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 富山といえば薬売りだが、薬草茶もたくさん。

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競い合うかのようにトウガラシ。

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ぎんなん粉とは珍しい。この地区はギンナン、あっちの地区はエゴマというように、地区ごとに特産品開発をしているようだ。

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柿ジャムもまた珍しい。

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「幸せの葉」として売られていた「マザーリーフ」。葉から発芽して成長する不思議な植物で、小笠原では「ハカラメ」(そのまんますぎる名前!)と呼ばれている。ただでさえ珍しい植物なのに、なんで北陸富山に!!?

 

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冬場は雪に閉ざされる富山だからこそ、保存食の文化がある。いまでこそ各地で売られるようになったけど、富山の干し野菜の歴史は古い。アクがあるので黒ずんでいることが多い干しナスだけど、ここで売っていたのは色も形も見事!美しい!

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食べ方のメモをチョコッと入れているのもありがたい。蒸してから干しているのが、色をきれいに仕上げるコツだろう(ブランチングという)。

 

 

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 城端には世界的なヒーローがいる。その人とは稲塚権次郎。

 小麦農林10号の育成者である。岩手農事試験場で稲塚氏によって育成された農林10号は戦後、GHQによって接収されて世界各国の小麦の新品種の親となり、小麦の生産量を飛躍的に向上させ、緑の革命と呼ばれる農業革命の一翼を担った。世界の飢餓を救った。その稲塚氏の故郷が城端町である。また、稲塚氏は故郷城端の農業振興にも尽力したという。氏の活躍は2015年に『NORIN TEN〜稲塚権次郎物語〜』として仲代達矢主演で映画化もされた。まさに富山が、城端が世界に誇る人物。

 

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 こうした故郷の偉人の名前を冠した、農林10号を使ったパンや素麺などの小麦製品もたくさん置いている。直売所は安くて新鮮な農産物が手に入る場所である一方で、外から来た人たちに地域をPRする場所でもある。郷土の誇りがこんなふうに農産加工品に表現されていることで、この地域がどんな地域か見えてくる。

 

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富山といえば知る人ぞ知る素麺の産地でもある。その代表は砺波市の大門素麺だけど、南砺市にも利賀村の清流素麺がある。そして権次郎そうめんも。そうめんは農家の副業として作られてきたもの。

 

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また、城端は繭の集積地でもあり絹織物も盛んだったことを伝えるシルク製品。和紙もある。

 

城端町五箇山と砺波平野との結節点にある商都であり、浄土真宗の古刹善徳寺の門前町でもある。石川県でいうと白峰の麓である鶴来町と成り立ちが近いかもしれない。宮本常一が『生きていく民俗 ---生業の推移 (河出文庫)』の中で書いているように、穀物の乏しい山間部と、刈敷や木材に乏しい平野部との間では古くから交易が盛んに行なわれていた。北陸はそういう交易で栄えた街が顕著に残っていて、越中では城端や八尾、加賀では鶴来というわけだ。そういう街では山の資源を活かした産業、例えば絹織物や家具、漆器などのもの作りも盛んで、北陸の製造業のベースになっているとも言える。ヨッテカーレ城端はそういう街の歴史と文化の一端を感じられる、富山の玄関口にピッタリの店なのだ。

www.yottekare-johana.com